片足を投げ出すように座っていたり、地面に寝そべっていたり、卒然と立ち上がったような姿だったり、またその骨格も男性的な逞しいものから、しなやかな女性的なものまでー仏像に代表される仏教美術が、時を経て国から国へと伝わる過程で、変化を遂げたことはよく知られている。
ただ、密教における密教美術の変化と相違が、チベットと日本とでこれほどかけ離れたものとなったことは、あまり知られていないのではないだろうか。
現在、上野の森美術館で開催中の「聖地チベット~ポタラ宮と天空の至宝展」では、チベットの地で10世紀以降に独自の発展を遂げたチベット密教の密教美術と法具の類が120点あまり展示されている。曼荼羅図、三鈷杵などの法具類は日本の真言密教と同じようなものながら、立体となった偶像の姿は、日本のそれとは違い過ぎていて、元(もと)が何だったのかさえ想像できないほど。
この異形の偶像を見て、"信じる"という気持ちになる日本人は、おそらくいないのではないか。
しかしながら、人間の想像力というのは幅広く、底知れず奥深いものだなぁ、という気持ちにはさせてくれる。
ちなみに、この「聖地チベット~ポタラ宮と天空の至宝」展を観たのは、この8月 札幌の道立近代美術館開催につづいて、今回の上野で2回目。物好きといわれればそれまでだが、一度観たくらいでは理解できないほど、不思議がいっぱい詰まった展示企画なのだ。